
お子さんが無意識に爪を噛んでしまう姿を見ると、心配になりますね。
「注意してもやめられない」「いつの間にかまた噛んでいる」――そんな相談を、臨床の現場でもよくお受けします。
実は爪かみは、心や身体のバランスをとるための行動(自己調整行動)のひとつ。
単なる「クセ」ではなく、安心を求めるサインであることが多いのです。
筆者の娘(小学1年生)にも、軽い爪かみのくせがあります。
今回は、娘への実践を通して感じたことを交えながら、筆者なりの爪かみへの対応方法をご紹介します。
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爪かみの主な原因
小学生になると、学校生活・友人関係・学習など新しい環境が増え、
緊張や不安が高まりやすくなります。
🧩よく見られる原因
- 不安や緊張の高まり
環境の変化や人間関係のプレッシャーなどで、無意識に口元へ手がいきやすくなります。 - 退屈・手持ちぶさた
テレビを見ているとき、考えごとをしているときなど、静かな時間に出やすい傾向があります。 - 感覚刺激の好み
「爪の硬さ」「噛んだ時の感覚」が落ち着くと感じるお子さんもいます。
爪かみをやめさせる前に大切なこと
すぐにやめさせる方法を実践するよりも、なぜ噛みたくなるのかを理解することが第一歩です。
爪噛みそのものを否定せず、「安心したい」「落ち着きたい」という気持ちに寄り添ってあげましょう。
ご家庭でできるサポート方法
① 爪を噛む代わりに、噛んでも良いものを用意する
爪かみの多くは「噛むことで落ち着く」感覚的な理由があります。
そのため、安全に噛める代替アイテムを取り入れるのはとても効果的です。
口の感覚を満たしながら安心して過ごせるよう、次のようなグッズを活用してみましょう。
- 噛み噛みネックレス
医療・療育の現場でも使われるシリコン製のチューイーペンダント。
耐久性が高く、熱湯消毒や食洗機での洗浄、太陽光での乾燥も可能です。
▶️[Amazonで噛み噛みネックレスを見る] - 噛む鉛筆キャップ
学習中につい鉛筆を噛んでしまうお子さんにおすすめ。
自然に使えて、集中しやすい環境づくりにもつながります。
▶️[Amazonで噛む鉛筆キャップを見る] - ガム・にぼし・ドライフルーツなどの咀嚼食品
「噛む」感覚を日常的に取り入れることも、口の感覚を満たす代替刺激になります。
💡ポイント:
大切なのは、「噛むこと」を禁止するのではなく、
“噛んでも安心なものに置き換える”という発想でサポートしてあげることです。
これらのアイテムは、徐々に場面を限定することや、噛まずに済んだ時に言葉で褒めることを意識し、徐々に頻度を減らしていくことがステップアップになります。
② 指先や手を使う活動を取り入れる
粘土・折り紙・ビーズ遊びなどの手先の作業は、感覚を満たし落ち着きを促します。
「手の感覚」が満たされることで、口に意識が向きにくくなるお子さんも多いです。
③ 感覚統合的なアプローチ
爪かみは「身体を落ち着かせたい」というサインであることも。
その場合は、身体の感覚を整える活動を取り入れるのが効果的です。
- スライム・砂遊びなどの触覚遊び
- 荷物運び・雑巾がけなど重い動作(深部感覚刺激)
- シャボン玉・風車など息を使う遊び(呼吸調整)
これらの遊びは、体をしっかり動かすことで気持ちを落ち着かせたり、安心感を得たりする助けになります。
④ 行動を“見える化”する
「どんなときに爪を噛んでいるのか」を一緒に観察し、きっかけとなっている場面や気持ちを見つけることも大切です。
たとえば、
- 宿題中やテレビを見ているとき
- 友達との出来事のあと
- 不安そうな表情をしているとき
といった“爪かみが出やすいタイミング”を見つけることで、
「どうして噛みたくなるのか」「どんなサポートが必要か」が少しずつ見えてきます。
観察を通してお子さんの気持ちを理解し、安心できる環境づくりにつなげていくことが第一歩です。
⑤ 爪や手のケアを一緒に

爪を整えて、ハンドクリームを塗るなどの「手のお手入れ」を一緒に行うと、
「きれいな爪を保ちたい」という意識づけになります。
ポジティブな声かけを添えることがポイントです。
筆者の小1娘も時々爪噛みをする癖があり、苦い味のマニュキュア「つめまもり」を購入し塗ってみました。
すると、マニュキュアを塗るというちょっと大人の行動が嬉しかったようで、爪を大事にするようになりました。
またうっかり噛んでしまうと苦いので、噛むことを避けるようになったと言っていました。
↓爪噛みをした跡がある娘の指

相談の目安
もし爪かみが長期間続く、爪や皮膚に傷がある、他の不安行動(指しゃぶり・衣服かじりなど)も見られる場合は、
学校のスクールカウンセラーや小児発達支援の専門家へ相談してみましょう。
「やめさせる」よりも、「落ち着ける方法を一緒に探す」ことが目的です。
まとめ
爪かみは、子どもが自分の心を落ち着かせるための自然な行動のひとつです。
叱るよりも、「なぜそうしたくなるのか」を理解し、安心できる代替手段や感覚の満たし方を見つけていくことが、意外と近道だったりします。
家庭での小さな工夫が、お子さんの自己調整力を育てる大きな一歩になります。



