
離乳食が進んでくると、赤ちゃんが自分の手で食べ物をつかんで口に運ぼうとする「手づかみ食べ」が始まります。
見ていると、テーブルも服も床もあっという間にぐちゃぐちゃ…。
思わず「もうやめて〜!」と言いたくなることもありますよね。
でも、作業療法士として、そして3人の子どもの母として感じるのは、
この“手づかみ食べ”の時間こそ、発達の宝箱のような瞬間だということです。
手づかみ食べが育てる3つの力
① 感覚を育てる力
手で食べ物をつかむことで、「冷たい」「やわらかい」「ぬるぬるしている」といった感触を体で覚えていきます。
この“触覚の経験”が積み重なることで、食べる意欲や感覚のバランスが整っていきます。
作業療法の現場でも、こうした感触の経験はとても大切にされています。
② 手先の器用さ
指先でつかむ、握る、離す――。
この一連の動きが、後の「スプーンを使う」「おもちゃを扱う」「ボタンを留める」といった手の使い方の土台になります。
“手で食べる”という自然な動きの中で、実はたくさんの練習をしているのです。
③ 「自分でできた!」という気持ち
自分の手で食べたいものを選び、口に運ぶ。
この経験は、「自分でできた」という自信を育てます。
その達成感が、少しずつ「着替える」「片づける」といった自立の芽につながっていきます。
わが家の手づかみ食べの工夫
わが子も10ヶ月ごろから、食べ物を自分の手でつかもうとする姿が見られるようになりました。
正直、掃除は大変ですし、毎食ちょっとした気合いが必要です。
でもこの時期は、“汚れて当たり前”のスタイルで楽しむことを心がけています。
- 椅子の下にはビニールシートを敷いて、床汚れを気にせず見守れるように。
- 手口拭きやティッシュは自分からすぐ手が届くところに置いています。
- 食べ終わったらそのまま抱っこで洗面所へ直行。手足や顔を洗って着替えます。
- 親も汚れてもいい服を着て、急に立ち上がった時にもすぐ抱き上げられるようにしています。
- そして、毎日のメニューの中に手づかみしやすい食材を少し取り入れています。
■ 手づかみ食べにおすすめのメニュー
作業療法士としても、そしてママとしてもおすすめしたいのは、
「つかみやすくて、成功体験を積める」食べものです。
- 蒸し野菜(炊飯器でお米と一緒に炊くと時短にも◎)
- 骨付き肉(やわらかく火を通し、軟骨には注意)
- ロールサンドイッチ(薄い食パンに卵やペースト野菜などを巻いて食べやすく)
- マッシュしたかぼちゃやじゃがいもを形成して、パン粉をつけて焼いたもの
- しらす(指先でつまむ練習にぴったり)
どれも、つかみやすく、手に感触が残る食材です。
「食べられた!」「持てた!」という体験が、次の意欲につながっていきます。
“きれいに食べること”よりも、“自分で食べる経験”を
どうしても「こぼさず食べてほしい」と思ってしまいますが、
この時期は上手に食べる練習ではなく、“自分で食べる”練習です。
汚れながら食べることは、成長の証。
その一口一口の中に、感覚・運動・自立のすべてが詰まっています。
おわりに
食べる力は、生きる力。
手づかみ食べは、その第一歩です。
汚れたテーブルを拭きながら、「今日もたくさん成長したな」と思えるような、
そんなあたたかい食卓を一緒に楽しんでいけたらうれしいです。
▶️関連記事はこちら👇



