作業療法士として乳幼児健診や発達相談に関わっていると、
「ずり這いが片側だけになってしまう」「同じ方の手足ばかり使う」というご相談をとてもよく受けます。
結論から言うと、片側ずり這いそのものが大きな問題というわけではありません。
赤ちゃんの発達は個人差が大きく、その時々の得意・不得意が動きとして表れることはよくあります。
ただ、片側だけに偏る動きの“背景”には、体の向き癖や筋力差などの小さな不均衡が隠れていることがあります。
その“土台”の部分を整えていくことで、その後のはいはい・お座り・立つ動作がもっとスムーズに進みやすくなります。
そこで今回は、健診でもよくお伝えしている
「片側ずり這いの背景にある原因」 と 「家庭でできる体の整え方」 を分かりやすくまとめました。
片側ずり這いの主な原因5つ
① 体の向き癖(回旋のクセ)
いつも同じ方向に寝返りしたり、物を取るときに決まった側の手ばかり使っていると、ずり這いにも左右差が出やすくなります。
② 筋力差・体のかたさ
お腹・肩・股関節の左右差、筋緊張の違いによって「使いやすい側だけ」で進もうとすることがあります。
③ 体幹の安定がまだ弱い
お腹の力が弱いと、重心移動が楽な側にばかり流れるため、片側で進んでしまいがちです。
④ 視線がいつも同じ方向に向きやすい
赤ちゃんが見たい方向が決まっていると、遊びや身体の動きもその側に偏ります。
⑤ 環境・配置の影響
おもちゃの置き場所や部屋のレイアウトで、動きやすい方向が固定されてしまうこともあります。
家庭でできるサポート(今日からできる5つ)
ここで紹介する内容は、赤ちゃんの様子、顔色を見ながら楽しい雰囲気を忘れずに、行なってください。
① 苦手側に興味を向ける“おもちゃの置き方”
- 苦手な手足側におもちゃを置く
- 苦手側への声かけやアイコンタクトを増やす
→ 自然とそちらへ体を向ける練習になります。
② うつ伏せでの“ちょいサポート”
- 苦手な方の脇に手を添えて腕が前に出やすいようにする
- 苦手な方の足裏に軽い抵抗をつけて蹴りの感覚を引き出す
→ 小さなサポートで動きが大きく変わることがあります。
③ 左右の動きを引き出す遊び
- ボールなど追いかける目標になるものを左右に転がす
- タオルを片手で握ってもらい軽く引っ張る。左右で行う。
- 寝返りを反対方向にも誘う→⑤
→ 体の“ひねり”をバランスよく育てます。
④ ハイハイにつながる姿勢づくり
お腹の下に丸めたタオルを入れ、「お尻が少し高い姿勢」を体験させると、両手が均等に前へ出しやすくなります。
⑤ 寝返りに左右差がある場合のサポート
- 寝返りが苦手な側にできるよう、環境や手のサポートで回旋を助ける
- 苦手側に興味のあるおもちゃを置き、自然に動くきっかけを作る
→ 片側ばかりに偏らないよう、左右バランスを整える練習になります。
最後に注意したいこと
最後に、ひとつだけ大切なポイントがあります。
片側ずり這いは個人差の範囲で見られることも多いのですが、ご家庭だけで判断しすぎないことがとても大切です。
もし
- 左右差が強く続いている
- 明らかに使いにくそうな手足がある
- 動くときに泣いて嫌がる
- 他の発達でも気になる点がある
などが見られる場合は、早めに専門家(小児のOT/PT、健診の相談窓口など)へ相談してもらうと安心です。
早めのサポートは、赤ちゃんにとっても無理がなく、動きの土台を整えやすい時期です。
気になる時は遠慮なく相談してみてくださいね。
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